20101109

ブラジル渡航レポート Vol.17

先月渡伯した千葉支部代表によるブラジルレポートです。

千葉支部代表 中村


「私たちは家族だ。」
Mestre Decioからずっと与えられ続けていた言葉だが、ようやくその意味を身をもって感じられるようになってきた。
よちよち歩きだった女の子は大きく成長して立派な女性に、
お腹の中にいた男の子はいたずら盛りに、
あどけなかった少年は私の背をとうに追い抜き、
同年代の共に稽古に励んだ仲間は立派な父親に。
町も人も、毎年少しずつ変わっていくブラジル。
年に一度リオの実家に帰る。
私と、私の家族の無事を報告する。

まずはcapoeiraありき、本部道場での稽古ありきというのが渡伯にあたっての心構え。
だからそういう意味では「実家に帰る」という表現は見方によっては不謹慎に思えるかもしれない。
ただ、一年に一度という再開を何度も何度も繰り返すうちに、そういう感覚になっていったことは事実だ。
本当の親族以上に家族らしい会話もなされている。
まずはお互いの無事、家族の健康を確かめ合う。
神様に感謝する。
それからrodaの中で互いの成長を確かめ合う。
これがcordao de contasにおける家族の在り方なのだ。


今年は本部の30周年記念の昇段式。
本部のMestre Vaga-lumeとMestre Mestiçoが2段階目のMestreの帯に、
そしてContra mestre Dungaと日本支部代表のContra mestre SamuraiがMestreの帯に昇段。
特に我が師、Samurai先生の昇段に関しては、生涯忘れられないものとなるだろう。
mestreの昇段というものは別格である。
capoeiraに携わる者であれば容易に想像出来る事だが、その実は想像すら出来ない。
「なんだかよくわからなかったけど凄かった。」
そんな小学生のような感想が一番しっくりくる表現だ。
とにかくあの空間に居られただけで良かった。

Berimbauが奏でられ、歌が添えられ、ジョゴをする。
馴染みのrodaの絵であるはずが、少し違ってみえた。

扉があった。
既に開いている扉だ。
扉に向かって歩くsamurai先生。
リオデジャネイロの名だたるMestre達がその扉の向こうからsamurai先生を招き入れる。
その扉を越えて歩いていくsamurai先生。
そして扉だけが消え、ジョゴをしているsamurai先生だけが残る。

こんな不思議な映像と実際の映像が混じりあってみえた。
その扉が入り口なのか出口なのかは分からない。
ただ、こちらからは見えない世界に行ってしまわれたような気がした。

その不思議な映像の余韻にひたりながら、私は自身のContra mestreへの昇段を受けた。
一緒に昇段したChocolateとともに、たくさんのmestreとrodaの中で会話を交わす。
当然ながらそこにあの扉はない。
ただ「君もあそこに近づいているよ」という証しは腰に巻かれていた。



今回の渡伯は子連れだったこともあり、samurai先生をはじめ同行した皆さんに助けられながらの生活となった。
そして暖かく迎えいれてくださったDecio館長一家。
さらには渡伯中に代行を引き受けてくれた上級生達や、お祝いの気持ちが詰め込まれた映像を送ってくださった生徒の皆さん。
全てに感謝したい。
Muito obrigado!


8月末に膝の前十字靭帯を断裂し、今月中旬に再建手術を受ける。
これらを軽く乗りきる力はもう、日本の、ブラジルの仲間達から頂いた。
あとは真っ直ぐ挑むのみ。

あの扉は開いていた。
開いたままで、閉じることなく消えていった。
あれはきっと誰にでも開かれている扉なのだ。
そして、そこに辿り着くまで歩み続ければ良いだけなのだ。



千葉支部代表 中村

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