20110627

ブラジル渡航レポート Vol.24

ブラジル渡航レポート
2011年4月14日〜5月28日

東京支部 佐々木 岳人(Grilo)

 私はカポエイラを18歳の夏から始め、今年で10年になりました。ただこの10年間、1度もブラジルを訪れた事は無く、満を持して1ヶ月半の渡航となりました。

 ブラジルの道場に着いて真っ先に感じた事、それは日本で一生カポエイラを練習したとしても気付かない、圧倒的なカポエイラの「色」の違い。リオのカポエイラは「格闘技そのもの」であるという事。私自身、その事について日本で考えていなかったわけではありません。むしろ、カポエイラは格闘技であるとして、毎回の練習に臨んでいるつもりでした。しかし、「理解をする」という事と「体感する」事の圧倒的な違いが、そこにはやはり存在していたのだなと、ブラジルのカポエリスタと対峙した瞬間に解りました。

 彼等にとって、カポエイラで対峙するという事は、相手を実際に「打ち負かす」までは終わりでは無い、という事。逆に自分がどれだけ攻め込まれていても、動けなくなるまでは絶対に負けていない、という強い信念で臨むという事。そして、カポエイラが終わった後はその事をすっかり忘れて、また仲間としてやっていくという事。あの、散々戦った後のブラジルの生徒達の後腐れの無さには、本当に驚きました。

後腐れ無く皆で楽器の練習。


 私がリオに滞在中は実に多くのイベントがあり、4月はよく解らないまま右往左往している所を神奈川支部長の中嶋先生に手取り足取りフォローをして頂き、5月には日本人は私だけだったので、その都度館長からの指示で色々な所を訪問しました。

 5月22日には、Contra Mestre(副師範) Quati がサンタ・カタリナ州で初めての昇段式(Batizado)を開催する、という事で、5月19日にリオを離れ、サンタ・カタリナ州サン・ミゲル・ド・ウエスチという街へ向かいました。リオからは飛行機でパラナ州へ向かい、翌日に車でサンタ・カタリナを目指すという道のりだったのですが、この車が一向に目的地に到着しない(笑)。道路は延々と荒野を走り、20〜30分に一度町灯りが見える、そんな中、途中車から煙が吹き上がって止まったり、そもそも4人乗り2ドアのセダンに6人で乗ったので、後部座席は大変な状況でした。
 やっとの思いで目的地に到着した時には出発から7時間が経過。それでも皆笑顔で笑い話に出来る所は、やっぱりブラジルの力なのかな、と。私もその時は笑うしか思い浮かばなかったですが。

 さて、初めての昇段式開催という事で、一体どんな感じなのかと思っていたのですが、地元の人々からの関心はとても高く、会場の体育館には多くの人々が集まっていました。そして、驚くべきはその生徒達の身体能力の高さ。まだ日本で言えば中学に入り立て位の年齢の子供が多いですが、彼等は我流で覚えた空中技を昇段式前から披露。トーマス旋回(体操の技ですね)なども、我流で出来てしまいます。昇段式が始まった後も技合戦が続き、地元の方々も盛り上がっていました。

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 ただ、館長はリオに帰宅するとすぐ私に「あのバチザドについてはどう思う?」と質問をしました。「皆、カポエイラに対する情熱があって、地域の理解もあり、良かったのでは無いですか?」と答えた所、「あれはまだカポエイラにはなっていない。昔の日本と同じで、技や動きが重視されている。でもカポエイラはそうでは無い。」とおっしゃっていました。「カポエイラはルタ(戦い)だ。」
 私はこの滞在期間中ずっとこの事を吸収していたのだと思います。カポエイラは戦い。そして、日本人なりの戦い方、特に私は身体の線が細く、力勝負では負けてしまう、そういう人間が同じ土俵で互角に渡り合う方法、それを創り、磨きをかけていく事が、これから私に求められている事であると思います。

 最後に、滞在期間中は神奈川支部の中嶋先生、新潟支部の吉田さんには本当にお世話になりました。有り難うございました。これからは毎年、ブラジルで修行をする期間を設けたいと、本当に思える2ヶ月でした。

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